しかしながら、日本の教育の現場では、発言すること自体を積極的に求めない教育環境を長年続けているために、静かに教師の言うことをただ聞いて、黒板に書かれたことをノートに書き写すと言う、実に旧態依然とした、国際的にはまったく遅れた授業が毎日、全国的に行われているのが実情です。
このような環境で育った人間が、社会に出て、会議で発言を求められても、自分の意見を明確に参加者に伝えることは困難であるばかりか、自ら発言し、質問しよう、意見の述べようと思うことすらないのです。
これでは、日本の産業が国際競争社会で勝てるはずがありません。
わたしは、自分が講師あるいはチェアをする場合、次のような方策をもって参加者の発言を誘導しています。
1. 自分は椅子に座らない。視線を高くすることで、室内の全般を見渡すことができます。
また、簡単に移動することができるので、意見を言いたそうな眼をしている人の近くに行って、耳元で直接質問ができます。
相対で聞かれると、その人は何らかの回答をしなければならなくなり、口を開くことになります。
2. Yesか、Noに簡単に分けられる質問を繰り返して行き、挙手させて、会議に参加させます。
その中で、こちらから指名して、Yes、Noと判断した背景や理由、Yesの人には、なぜNoでないのか、と意見を聞きます。
このようなキャッチボールを繰り返すと、その場が発言しやすい雰囲気となって行きます。
自分にとって、発言することが利益になることを理解させるのが大事です。
3. 半ば途中で、全員に起立してもらい、両手を挙げて、背伸びしてもらいます。
これを3回繰り返して、眠気防止の手を打ちます。
背伸び以外に、身体をねじったり、首を回したりするのも効果的です。
参加者でそろって何かをするというアクション自体が会議への参画意識を高めることになります。
4. 参加者がノートをしっかりと取るようになったら集中力が高まってきている証拠です。
ただ、漠然と話を聞いている段階では、未だ参画意識が低いと考えてください。
質問を準備するために、ノートに箇条書きで質問内容をまとめる行動が見られたら、その会議はかなりうまく行っていると思ってよいでしょう。
5. 場が馴染んできたら、意見の集約をするために、発言があった内容をまとめて、それぞれの意見について、さらに深く考察して行きます。
反対意見がでるようになったら、議論が白熱してきておもしろくなります。
方向性を決定する会議では、結論を出さなければなりません。
いろんな意見をもとに参加者の合意を得て、的を絞って行きます。
ここで大事なことは、あせらないこと。必要であれば、次の機会に結論を後送りするぐらいの覚悟も必要です。